世界的に有名で毎年ノーベル文学賞の候補に上がる小説家・村上春樹。
誰もが知っている代表作といえば、1987年に発表された『ノルウェイの森』。
『ノルウェイの森』は長編小説で、村上さんがギリシャに住んでいたころに書かれた作品です。
上巻が赤、下巻が緑、の目立つ装丁ですので、本屋さんで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
この記事では、『ノルウェイの森』のなかで書かれている愛・死・悲しみにまつわる名言を紹介していきたいと思います。
もくじ(各リンクから移動できます)
【村上春樹・ノルウェイの森】愛・死・悲しみにまつわる名言5選
文鎮の中にも、ビリヤード台の上に並んだ赤と白の四個のボールの中にも死は存在していた。そして我々はそれをまるで細かいちりみたいに肺の中に吸いこみながら生きているのだ。
こちらは主人公のワタナベくんが親友のキズキくんを自殺で失ったときに考えていた言葉です。
身近にあるすべてに、死は含まれているなんて考えたこともなかったですし、自分たちはほんとうに、はかない「生」の世界で生きているんだなと感じられる文章です。
死は生の対極存在なんかではない。死は僕という存在の中に本来的に既に含まれているのだし、その事実はどれだけ努力しても忘れ去ることのできるものではないのだ。
こちらは、ワタナベくんが親友のキズキくんを自殺で失ったときに、彼の死から学んだことを言語化した箇所です。
「生」の対極に位置するものが、「死」だと普通は思いがちですよね。しかし、生きている以上、いつ「死」が訪れてもおかしくないわけですよね。
四月は一人ぼっちで過すには淋しすぎる季節だった。四月にはまわりの人々はみんな幸せそうに見えた。人々はコートを脱ぎ捨て、明るい日だまりの中でおしゃべりをしたり、キャッチボールをしたり、恋をしたりしていた。
こちらは、ワタナベくんが同じ大学に通う緑とケンカしているときに、大学内を歩いている風景の文章です。
春……大学のキャンパス……まわりのすべての人たちが楽しそうに見える……友達がぜんぜんいないワタナベくん。
せつないですね。
春なのに、ワタナベくんはひとりぼっちなのです。
なんだか胸が締めつけられます。
どのような真理をもってしても愛するものを亡くした哀しみを癒すことはできないのだ。どのような真理も、どのような誠実さも、どのような強さも、どのような優しさも、その哀しみを癒すことはできないのだ。我々はその哀しみを哀しみ抜いて、そこから何かを学びとることしかできないし、そしてその学びとった何かも、次にやってくる予期せぬ哀しみに対しては何の役にも立たないのだ
物語終盤。かつて自殺したキズキくんのガールフレンドである直子を自殺で亡くしてしまったワタナベくんは、ひとりで旅に出ます。ワタナベくんは悲しみながら、旅をするなかで、彼が考えたことが上記の文章です。
「学びとった何かも、次にやってくる予期せぬ哀しみに対しては何の役にも立たない」なんて文章を生み出せる村上さんすごいです。
それにしても、ワタナベくん、春のキャンパスでひとりだったり、身近な人を自殺で亡くしたりしながら、タフに生きています。そして、物語の最後にたどりつきます。
僕は緑に電話をかけ、君とどうしても話がしたいんだ。話すことがいっぱいある。話さなくちゃいけないことがいっぱいある。世界中に君以外に求めるものは何もない。君と会って話したい。何もかもを君と二人で最初から始めたい、と言った。
たくさんの悲しみをくぐり抜けたワタナベくんが、最後の最後で、緑へと電話する場面です。
『ノルウェイの森』では、ワタナベくんはまわりにいた、親友のキズキ、ハツミさん、直子……の3人を自殺で失っています。
想像を絶する悲しみですね。
しかし、なんとか生き抜いたワタナベくんは、緑に想いを伝えます。
物語の最後のセリフです。
ワタナベくん、ほんとによくがんばったね。
『ノルウェイの森』をオーディオブックで聞くには
最近、オーディオブックが新しい読書法として流行っていますよね。
『ノルウェイの森』についても、どこかで聞けるか調べてみました。
どうやら現在(2022年8月時点)、『ノルウェイの森』は、オーディオブックで公式に作品がないので聞けません。
【代案】kindle版の『ノルウェイの森』を購入し、スマホの読み上げ機能を使う
代案としては、kindleで『ノルウェイの森』を購入して読み上げ機能を使えば、若干たどたどしくはあるのですが、自作の朗読音源ができあがります。
自分はこの案で『ノルウェイの森』を聴いているのですが、じゅうぶん聞けます
『螢・納屋を焼く・その他の短編』をオーディブルで『螢』の部分だけ聞く
村上春樹さんは『螢』という短編を元に、『ノルウェイの森』を書き上げました。
この『螢』は現在、Amazonのオーディブルでオーディオブックとして登場しています(2022年8月下旬時点)。
上記で紹介した『死は生の対極存在なんかではない』の部分も、『螢』の中では読み上げられています。
ちなみにこの『螢』は、映画でワタナベを演じた松山ケンイチさんが朗読しています。
これは一聴の価値ありです。
『螢』以外にも下記の作品がオーディオブックになっています。
村上さんは何度も書き直しをすることで有名です。
あと書き直しの際に、”耳”を使って音の響きを確認しながら書き直ししているみたいです。
だから、村上春樹作品をいちばん楽しめる方法は、もしかしたらオーディオブックなのかもしれません。
『ノルウェイの森』がないのは残念ですが、Amazonのオーディブルで過去の村上春樹作品を耳で楽しむのも良いですよ。
>amazonオーディブル30日間無料体験を試す(期間内に解約すれば料金は0円)思い切って英語でノルウェイの森(Norwegian Wood )を聞きながら読む
調べてみたところ、Amazonオーディブルでは、Norwegian Woodがありました。
『ノルウェイの森』を一度読んだことがある人なら、ストーリーを知っているはずですから、英語の勉強もかねてAmazonオーディブルでは、『Norwegian Wood』を聞いてみるのもよいでしょう。
>amazonオーディブル30日間無料体験を試す(期間内に解約すれば料金は0円)手元にペーパーバックの『Norwegian Wood』があれば、ナレーターの朗読も目で読めますから、英語の勉強にはうってつけかもしれません。
まとめ
『ノルウェイの森』は、村上春樹作品の中でいちばんの代表作で世界中で読まれています。
難解な村上春樹作品の中で、『ノルウェイの森』はほとんどの人が経験するであろう、大学生活を中心とした現実的なお話です。
文章も読みやすいので、村上春樹初心者としても、おすすめかもしれません。
『ノルウェイの森』は秋とか冬あたりになぜか、読み返したくなるんですよね。
みなさんも、ぜひお気に入りの名文を探してみてください。
・ねじまき鳥クロニクル(1,2,3部)
・東京奇譚集
・螢・納屋を焼く・その他の短編
・神の子どもたちはみな踊る
・職業としての小説家