早稲田大学にある、村上春樹ライブラリーの開館から1年が経ちました。
今回(2022年秋)、村上春樹ライブラリーのほぼ隣にある演劇博物館で『村上春樹 映画の旅』という企画展をやっていたので、行ってきました。
この記事では、『村上春樹 映画の旅』展に行った感想についてまとめています。
もくじ(各リンクから移動できます)
【村上春樹 映画の旅】展に行った感想
【村上春樹 映画の旅】について……は演劇博物館の公式HPの説明がわかりやすいのでそちらを確認してみてください。
ここでは行ってみた感想のみを書いていきます。
村上春樹さんによるあいさつ文がまずよかった
実際にこの企画展(演劇博物館の2階)に行ってみて、まず目に入ってくるのが村上さんのあいさつ文。
タイトルは「映画館の暗がりの中で」とあります。
そこにはざっくりとこんな感じのことが書いてあります。
ここの文章はこの企画展のために書いた文章のようです。
短めの文章ですが、村上春樹さんと映画・映画館との距離感がわかる素敵な文章でした。
おおげさかもしれませんが、ここの文章を読めたことがこの展覧会での1番の収穫でした。
村上春樹さんの卒業論文の表紙を見ることができた
この展示は5つのパートにわかれているのですが、第1章の「映画館の記憶」の中に、しれっと卒業論文の表紙(複製)がありました。
A4くらいの紙に村上春樹さんの手書きで『アメリカ映画における旅の思想』……とあります。
これははじめて見た気がします。
どこで読んだかは忘れましたが、村上さんは卒論を2.3日で適当に仕上げて「Aプラス」の高評価を受けたらしいです。
そのときの表紙!ですね。
当時の村上春樹さんのかわいらしい丸みをおびた直筆を見られたのはよかったです。
村上春樹作品に登場する映画のおさらいができた
展示会場の入り口脇の壁には、これまで村上春樹作品に登場した映画名の一覧がまとめられています。
各作品ごとに丁寧にまとめられています。
……ちょっと量が多すぎて驚きました。
写真撮影NGの展覧会でぜんぶを丁寧に確認するのは疲れたので、途中でやめました。
村上春樹さんってこんだけ映画を見ていたんですね。
アマゾンの『村上春樹 映画の旅』の商品紹介に、展示されていたのと同じ(たぶん)があったので、どんなのか気になる人は読んでみてください。
ひとつひとつの映画を見た上で、小説やらエッセイを読むと、村上さんがこめたメッセージにも気づける可能性が高くなりそうです。
【村上春樹 映画の旅】展・所要時間と注意点
展示自体は1フロアのみ(演劇博物館の2階)です。
所要時間はさらっと眺めれば30分。じっくり読み込めば1時間以上はかかりそうです。
できれば、複数回行きたいところです。
今回は平日の午後に行きましたが、それほど混んでいませんでした。
土日はわかりません。
わりと展示内の通路は狭いです。
空いているであろう平日に行ったほうがいいかもしれません。
平日は火曜日・金曜日のみは19時までやっているみたいなので(基本は17時まで)、平日に行くなら、火曜日・金曜日がいいかも。
ちなみに、中は撮影禁止でしたので、外観しかとっていません。
演劇博物館の建物の床は古いです。
誰かが歩くたびに「ギシギシ」というか、「ギーギー」というか、何かしらの音が気になってしまいます。
展示内容を見ていると、気になってしかたないですが、どうしようもないです(個人的な感想)。
村上春樹さんは当時、この演劇博物館に入り浸って映画のシナリオを読み漁っていたそうです。
もしかしたらこの床のきしみは、学生時代の村上春樹さんも聞いていたのかな、とか思ったら、ちょっと感動しました。
まとめ
『羊をめぐる冒険』で、主人公の『僕』と女の子が北海道について最初に映画館に行く場面があります。
『ダンス・ダンス・ダンス』でも、主人公の『僕』は札幌で、東京で、さらにはハワイでも映画館に行っていました。
最近のエッセイ『猫を棄てる』にも、村上春樹さんが神戸での子供時代に、日曜日に父と映画館に映画を見に行くというエピソードがあります。
ぱっと思い出せたのはこれくらいですが、村上春樹さんの文章にはいたるところに、映画と映画館にまつわる内容がありそうです。
これまで村上春樹さんと言えば、「図書館」が重要な場所みたいなイメージがありましたが、実はその次に重要な場所は映画館なのかもしれません。
映画館の暗がりが、井戸の底の暗闇(ねじまき鳥クロニクルとかに出てくる井戸の暗闇)につながっているのかもしれません。
今回、【村上春樹 映画の旅】展を見てみての映画に関して思ったこと。
今はスマホで定額でいつでも見られますが、映画館の暗い中で強制的に2時間も映画を見られるって、あらためて素晴らしい時間なんだな、と。
映画はスマホではなく、映画館で見たい……そんなことを思わせてくれる企画展でした。
今回、【村上春樹 映画の旅】では公式の本が2022年10月13日に発売されます。
遠方で早稲田大学まで行けないよという人、もしくは演劇博物館の床のきしみ音の中で展示パネルを読みたくないよという人は、こちらの本をぜひ。
・今と違って、昔は映画館しか映画を見る手段がなかった。
・どんなにつまらない映画でも映画館の2時間くらいの暗闇の中で、優れたシーンや面白い会話を見つけてきた。
・どんなにつまらないものの中からでも面白いものを見つける姿勢は、実生活の役に立った。
・映画館の暗がりは小説を書く上で役に立った。