『むらさきのスカートの女』。
ここ最近、tiktokで話題になった、今村夏子さんの中編小説です。
2019年に芥川賞も受賞したようです。
『むらさきのスカートの女』読んでみましたが、シンプルな感想としては、怖い!なんかいろいろと登場人物がヤバい!おもしろい!です。
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『むらさきのスカートの女』ざっくりあらすじ・感想
あらすじ
「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。文庫化にあたって各紙誌に執筆した芥川賞受賞記念エッセイを全て収録。
『むらさきのスカートの女』 amazon紹介ページより
感想(ネタバレなし)
ストーリーとしては、上記で紹介したようにシンプルです。
ただ、なんか絶妙に怖い。
主人公の私は、『むらさきのスカートの女』と友達になりたくて、異常に思えるほどに彼女を観察します。
怖さをお化け屋敷のような感じで全面的に出すのではなく、さりげなくというか、べつに怖がらせる気はありませんけど?みたいな感じで提示してくる小説のように思えました。
あと、現代的な要素があまりないです。
SNSとかLINEでのやりとりみたいな、最近の小説でありがちなシーンがないです。
まあ、この主人公の私が孤独な生活をしているから、というのもあるのでしょうけども。
とりあえず、『むらさきのスカートの女』はネタバレをするほどの特別なオチがあるわけでもないのです。
しかし、なぜだかするする読めてしまう不思議な小説です。
この物語の特徴としては、たいして何も起こらないけど、最初から最後までどこかしら不穏ということでしょうか。
あと『むらさきのスカートの女』には、個人的におもしろいシーンがたくさんあったのが良いです。
ストーリー以上に、細部のいたるところが怖くておもしろい。
そして、なんだかツッコミどころが多い! 文章を読んでいて思わず笑ってしまえる箇所がけっこうありました。
以下でよかったシーンをまとめてみます。
『むらさきのスカートの女』怖くてやばいけど、おもしろい部分
むらさきのスカートの女専用シート
主人公の「私」が住む町には公園があって、そこにはむらさきのスカートの女が座る、『むらさきのスカートの女専用シート』なるものがあります。
このネーミングがまずいいですよね。この名前だけで、じゅうぶん楽しめます。
今号の特集は「チームワーク抜群の職場」
主人公の「私」はむらさきのスカートの女を、自身と同じ職場へ就職するように、仕向けていきます。
まず「私」が序盤にむらさきのスカートの女専用シートに、求人情報誌をこっそり置いておくのです。
その号の特集は「チームワーク抜群の職場」!
「チームワーク抜群の職場」というワードもまた、今村さんが読者を笑わらせるためのサービス部分かな、と思われます。
「チームワーク抜群の職場」ってありがたいような、あまり行きたくないような……。
ここも地味に笑えるポイントです。
むらさきのスカートの女が公衆電話で電話をしているところまでも観察している
むらさきのスカートの女は求人情報誌をもとに、あらゆる職場にアタックするのですが、ぜんぜん面接に受かりません。
主人公の「私」は、なぜかむらさきのスカートの女の、そういう就活事情をなぜかすべて把握している!
むらさきのスカートの女を、ストーカーする私。
という、怖くてやばい設定もまたおもしろいです。
試供品のシャンプーを袋に入れ、むらさきのスカートの女のアパートのドアノブにかけておく
主人公の「私」は、むらさきのスカートの女の面接がうまくいくようにと、彼女の痛んだ髪を心配して、試供品のシャンプーを袋に入れ、むらさきの女のアパートのドアノブにかけておきます。
で、むらさきのスカートの女は律儀にそのシャンプーを使うんですね。
それがごく自然なトーンで語られているのですが……いや、なんかいろいろおかしい。
おかしいまま、物語がどんどん進んでいきます。
むらさきのスカートの女と、公園の子供たちがみんなでりんごをみんなでかじる場面
むらさきのスカートの女が、主人公の「私」と同じホテルの仕事で始め、そこでりんごをもらって町の公園に戻ってきます。
公園のベンチで、りんごをかじろうとしてむらさきのスカートの女。
子供たちは、その彼女の肩をたたくといういたずらをします。
その拍子に、りんごが地面に落ちてしまうのですが、子供たちが全員で謝罪して、全員で1つのりんごを洗うのです。
で、そのあと、むらさきのスカートの女と子供たちはみんなで、その1つのりんごを順番にかじるんですね。
……なにこの流れ? もう読んでいてその状況がおかしすぎて、笑えます。
ホテルのチーフが多すぎる問題
主人公の「私」とむらさきのスカートの女はホテルの客室清掃のお仕事をしています。
そこには、所長がいて、チーフクラスがいて、その下の新人がいる、みたいな組織らしいのですが、チーフがめちゃくちゃ多いです。
所長が職場に入りたてのむらさきのスカートの女に話をするシーンがこちら。
他にも浜本さんとか、橘さんとか、新庄さんとか、堀さんとか、宮地さんとか。あとは中谷さんとか、沖田さんとか、野々村さんとか。言ってみれば全員だな。全員強烈
『むらさきのスカートの女』より
この上記は全員チーフクラスらしいのですが、全員が全員、物語の中に独立したキャラクターとして登場はしないです。
ちなみに主人公の「私」も、権藤さんという名前のチーフなのです。
このチーフの羅列の箇所もなかなかおもしろい箇所です。
『むらさきのスカートの女』はどんな人におすすめか
下記のような人はぜひ読んでみてほしいです。
まとめ
『むらさきのスカートの女』は最近読んだ芥川賞作品の中ではいちばん面白いと感じましたね。
ストーリー以外の箇所がおもしろいというのが、地味に話題になっている理由なのかな、と思います。
オチがわかっていても、読み返したくなる作品です。
というよりこれは、オチ以外の箇所を楽しむ作品だと思いますね。
ちなみに、『むらさきのスカートの女』はAmazonオーディブルで30日間は無料で聴けます。おもしろいんで、ぜひ読んで(聞いて)みてください。
・余命●年みたいな、ありきたりな物語にうんざりしている人
・クスッと笑える小説を読みたい人向け
・とくにわかりやすいオチはないけど、おもしろい話が読みたい人
・2~3時間以内で読める中編小説を読みたい人