『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』を読んだ感想。死にたいけど死にたくない。矛盾の中で生きる。

世界的に有名な作家であるフランツ・カフカ。

カフカの作品といえば、朝起きたら虫になっていた……という小説『変身』が有名です。

カフカの他の作品も、だいたいは暗くて難解なストーリーばかり。

そのような物語ばかりをカフカが作っていたのは、彼が何度も自殺を考え、ほとんど死にたいと考えながら生きていたからかもしれません。

多くの偉大な作家が人生のどこかで自殺を選んでいます。

しかし、カフカは自殺してそうで自殺していないのです。

今回は『カフカはなぜ自殺しなかったのか?弱いからこそわかること』という本を読んで感じたことをまとめてみたいと思います。

『カフカはなぜ自殺しなかったのか?弱いからこそわかること』はどんな本か

『カフカはなぜ自殺しなかったのか?弱いからこそわかること』では、カフカが人生のなかで悩んでいたことが彼の日記や手紙の言葉を引用する形で紹介されています。

カフカの悩みとは主に、親との関係、仕事、結婚など。

カフカはさまざまな場面で落ち込み、絶望してします。

本書では、カフカが書いた日記や手紙がいたるところで紹介されています。

そのなかでも、カフカの人生を一言で表す言葉があります。

ぼくの人生は、自殺したいという願望を払いのけることだけに、費やされてしまった。

カフカは20世紀最高の小説家として評価をされていますが、その評価を受けるのは彼が亡くなってからです。

カフカは仕事をしながら小説を書き続けており、生涯を通じて自殺願望と戦っていました。

そして、最終的には結核という病気により、40歳で亡くなりました。

死にたがっているカフカの日記や手紙の言葉が独特

カフカは常々死にたがっていました。

例えばこのような言葉が紹介されています。

嫌な1週間だったよ。事務所では仕事が山のようにあるし、当分はずっとこんな調子かもしれない。それどころか、自分の葬式代まで自分で稼ぐことになりそうだ。

「仕事が嫌で死にたい」というのは現代社会でよく聞く言葉ですが、カフカも同じように思っていたようです。

次もまたユニークな手紙です。

申し訳ないけど、今晩は君のところには行けない。頭痛がして、歯が欠けて、ひげそりの切れ味がよくない。

友人あてに書いた手紙の内容ですが、断りの理由として使う言い回しはユーモアにあふれています。

「自殺したい」と思い続けたカフカは最終的に病気になります。そのときの言葉が下記です。

ぼくの病気は、心の病気です。肺の病気は、この心の病気が岸辺からあふれ出たものにすぎません。

「死にたい」と思い続けたことで心だけではなく、体も病気になってしまいました。

このような独特な言葉が本書ではたくさん紹介されています。

カフカはたくさんの悩みを抱えながら生きていた

自殺したいけど、自殺したくない……。

結婚したいけど、結婚したくない……。

本を出したいけど、本を出したくない……。

カフカはずっとこの葛藤状態のなかをなんとか生きていました。

カフカは生涯を通じて、ずっと悩み続けています。

カフカはこう書き残しています。

なんらかの矛盾のなかでのみ、僕は生きることができる。もっとも、これは誰でもそうなのだろう。人は、生きながら死んでいき、死にながら生きていくのだから。

「死にたいけど、死にたくない」

この矛盾は競争の激しい現代社会を生きる人たちも、こころのなかで感じていることではないでしょうか。

カフカはなぜ自殺しなかったのか?

たくさんの悩みによって、すり減り続けていたカフカ。

死にたいと思い続けた末に、カフカは最終的には病気で亡くなります。

病気になったときのカフカの言葉があります。

あの午前4時以降、まるで戦いが終わったかのように、よく眠れる。非常によくとは言えないまでも。何より、以前はどうしようもなかった頭痛が、すっかりおさまった。

カフカは常々、不眠や頭痛とも戦っていました。

そのカフカが頭痛がおさまり、よく眠れた瞬間です。

病気が発覚したことで、わざわざ自殺をしなくても死ぬことが確定しました。

カフカを悩ませ続けていた問題(仕事をしたくない、結婚したくない、死にたい)がいろいろありましたが、病気になってもう悩む必要がなくなったことで安心したようです。

この本の著者はカフカが病気になったことで「戦いが終わった」と書いています。

病気になるとたいていの人は悲しむはずですが、カフカは逆です。

カフカにとって、病気は救いだったのです。

ここで本書のタイトルにもなっている『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』の答えがなんとなく見えてきます。

本書ではこの質問に対して、明確な回答はありません。

しかし、あえて回答するなら、こういうことになりそうです。

『病気になったことで近い将来において自然に死ぬことが確定したため、あえて自殺する必要がなくなったから』

これがカフカの心情をあらわした回答だと、本書を読んで感じました。

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まとめ:現代に生きる人たちがカフカの弱さから学べること

カフカのように誰しも人生のなかで嫌なことがあって、死にたくなることがひとつくらいはあるでしょう。

カフカが死にたいと思いながら、嫌々ながらも生きていたように、僕たち現代人もとりあえずなんとか生き続けましょう。

死にたい(黒)けど、死にたくない(白)……と思いながら。

このような黒と白の間に存在する、精神のグレーゾーンをふらふらしながら生きているだけで、まあいいじゃないか、と感じさせてくれます。

この効率重視でストレスの多い現代社会のなかで「死にたい」と思うのは異常なことではなくて、むしろ正常の範囲の感情かもしれません。

死にたがっていたあのカフカも自殺はしなかったですし、まあいずれなんらかの形でどの人にも最期はやってくるでしょうし、とりあえずもうちょっと頑張ってみるか、と思わせてくれる不思議な1冊です。

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