【村上春樹訳『おおきな木』を読んだ感想】絵本は疲れている大人を癒やす

*こちらのページにはプロモーションが含まれています。

疲れていて何もやる気が出ず、なぜかふと絵本を読んでみようと思いました。

読んでみようと思った絵本は、村上春樹さんが翻訳している絵本『おおきな木(作:シェル・シルヴァスタイン)』です。

村上春樹さんは絵本の翻訳もやっており、いままで読んだことがなかったのでこの機会に読んでみました。

絵本を読むなんて、いつぶりでしょう……。

最後に読んだのはいつだったか思い出せず……。

大人が絵本を読んでも楽しくないのでは……と思っていたのですが、その予想はあっさりと打ち砕かれました。

今回は、大人が絵本を読むことのメリット、そして『おおきな木』を読んだ感想をまとめました。

疲れている大人には絵本が効く。大人が読むメリット

絵本はこどもから大人まで幅広い年代に読まれることを想定されている書物です。

文字もほどよい量で、使われている文字も簡単なものばかり。

短時間であっさり読めてしまいます。

さて、大人にも絵本がおすすめな理由は下記です。

・短時間で読めること

・童心に戻れること

・素敵な絵を眺めるだけでも癒されること

今回、絵本を読んでみてあらためて絵本のちからを思い知りました。

あと、絵本を読む効果について調べていたら、「絵本セラピー」という言葉を発見しました。

絵本セラピーとは

絵本を使うワークショップ形式のプログラムのこと。

絵本をとおして自分自身の心と向き合い「いままで忘れかけていた気持ち」や「自分とは異なる考え方」に触れ、新たな気づきを得られ、そして、ありのままの自分で交流できる安心安全な「場」を作る技術のこと。

やはり絵本には大人を癒やす効果もあるようですね。

「絵本セラピスト協会」というものがあるらしいので興味がある方はこちら

村上春樹訳『おおきな木』はどんなお話か(ネタバレあり)

この『おおきな木』は1964年にアメリカで出版されてから半世紀以上も読まれているロングセラーの絵本です。

簡単なストーリーを紹介

幼い男の子が成長し、老人になるまで、温かく見守り続ける1本の木。 

木は自分の全てを彼に与えてしまいます。それでも木は幸せでした。 

『おおきな木』の登場人物は、少年と木だけ。

木が少年の成長を見守り続けるという、とてもシンプルなストーリーです。

以下、ネタバレありで紹介

少年は青年になり、大人になり……そして最終的には老人になっていきます。

おおきな木は少年が青年になっても、大人になっても、中年になっても、老人になっても、ずっと「ぼうや」と呼び続けます。

その呼び方には母親のような愛情を感じます。

この絵本のテーマは、「無償の愛」のようです。

母親がこどものために愛情を注ぐように、おおきな木は少年のために尽くしています。

たとえば、「お金がほしい」と言う少年(青年になった少年)のために、おおきな木は枝になっているりんごを取らせ、町で売るように伝えます。

「家がほしい」と言う少年(大人になった少年)のために、おおきな木はみずからの枝を切らせて、家の材料として使わせます。

「遠くへ行きたい」と言う少年(中年になった少年)のために、幹(みき)を切り倒させて、船の材料として使わせます。

このように少年の要望に応え続けていくことで、おおきな木は最終的に切り株のみになってしまいます。

おおきな木は少年のためにみずからを犠牲にし続けていきますが、常に幸せを感じています。

しかし、切り株のみになった木には……どこかせつなさがあります。

そして、物語のラスト。

最終的に老人になった少年が、切り株のみになった木のもとに戻ってきます。

そして「とくに何も必要とはしない。腰をおろして休める、静かな場所があればそれでいいんだ。ずいぶん疲れてしまった」と木に言います。

それに対して、切り株になっている木は少年(老人になっている少年)を「わたしにおすわりなさい。すわって、ゆっくりおやすみなさい」と優しく迎え入れるのです。

このラストのシーンは、目頭が熱くなります。

大人が絵本『おおきな木』を読んで感じたこと

人は成長するにつれて高価なブランドものを追い求めたり、遠くへ旅へ行きたがったりします。

しかし、人が最終的に求めるものは、やはり落ち着ける場所なのだという気がします。

人生の最後にほとんどの人がたどり着くであろうそのシンプルな答えを、この『おおきな木』という絵本はわかりやすいストーリーと素朴な絵で表現してくれていると感じました。

『おおきな木』というこの絵本は、こどもよりもむしろ大人が読むべき一冊なのかもしれません。

まとめ

というわけで、疲れきった大人が増えた現代社会において絵本はこどもではなく、むしろ大人が読むべき本なのかもしれません。

自己啓発本・ビジネス書もたいせつですけど、絵本もたまにはいいですよ。

絵本なんて……と言わずに、ぜひ1度手に取ってみてください。

今回紹介した『おおきな木』はほんとにおすすめです。

ちなみに村上春樹さんがあとがきに、こんなことを書いています。

あなたが何歳であれ、できたら何度も何度もこのお話を読み返していただきたいと思います。一度ですんなりと理解し、納得する必要はありません。よくわからなくても、つまらなくても、反撥を感じても、腑に落ちなくてもやもやとしたものがあとに残っても、悲しすぎる、つらすぎると感じても、腹が立っても、とにかく何度も読み返してて下さい。これまで半世紀近くにわたって、みんながそんな風にこの本を読み継いできたのです。きっと何かがあなたの心に残るはずです。

というわけで、この『おおきな木』を人生の節目ごとに読み返していきたいと思います。

ひさびさに絵本でも読んでみようかという方には、おすすめですのでぜひ読んでみてください。