日常や仕事のなかで無駄なことをなくすことが正義だと思われています。
あらゆる場所でものごとが効率化されています。
効率化することは仕事をする上で重要な要素でもあります。
しかしいま、人々が排除し続けている”無駄”をあえて生み出している発明家がいます。
藤原麻里菜さんという方です。
ご存知ですか?
2021年10月にはForbes Japanが選ぶ『30 UNDER 30(世界を変える30歳未満の30人)』のアート部門を受賞し、世界的な発明家になりつつある藤原さんの発言・著書『考える術』についてまとめました。
もくじ(各リンクから移動できます)
無駄づくり発明家・藤原麻里菜さんについて
『オンライン飲み会緊急脱出マシーン』や、『Twitterでバーベキューと呟かれると藁人形に五寸釘が打ち付けられるマシーン』など、「無駄」とも思えるユニークな作品を発表している藤原麻里菜さん。
2016年にはGoogle社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年には台湾での初個展を開催し、25,000人以上の来場者を記録。
いま世界的に注目されている発明家です。
J-WAVE『LOVEFAV(ラブファブ)』にて、上白石萌歌さんと藤原麻里菜さんが対談
2021年11月13日に藤原麻里菜さんは上白石萌歌さんがパーソナリティをつとめる『LOVEFAV(ラブファブ)』に出演していました。
上白石萌歌さんは藤原さんの『無駄づくり』のファンだそうです。
ラジオの対談で藤原麻里菜さんが語っていたこと
藤原さんの『無駄づくり』は日常のなかでの”ムカつくこと”から生まれるとのこと。
そこから発明の発想が広がって奇抜でユニークな発明品が出来上がっていきます。
現在(2021年11月)、藤原さんは『優先順位の低い余計なことをあえてする』ことをしているそうです。
コロナのパンデミックにより、自身の生活にゆとりのなさ・つまらなさを感じており、人と会って飲み会・雑談もなく、規則正しく無駄づくりをするという生活をしている藤原さん。
変なことを生活のなかでやらないといけないな、と感じはじめたそうです。
藤原さんの毎朝の日課はその日のやることリストを作ることだそうですが、それとはべつに「どうでもいいタスクをあえてする」ことを意識しはじめたみたいです。
べつにやらなくてもいいto do listをやる。
例えば『メルカリで知らない子供の絵を買う』など。
藤原さんが買ったのは『知らない女の子が描いた犬の絵』。
売り上げはその女の子のおやつ代になったそう。
世界に大きく影響を与えているわけではないが、自分のするどうでもいいことが巡り巡って世界の端っこあたりに影響を与えているのがおもしろくていいな、と藤原さんは語っています。
べつにしなくてもいいけど、したほうが楽しいなと思うことをタスクにして自分に課すと生活が楽しくなるらしいです。
そもそも『無駄づくり』は、無駄はべつに悪いことではないと肯定したいから。
無駄なものを排除していった結果、残ったものはほんとうに素晴らしいものなのか?
空き地とか公園とかを守っていくことも大切で自分のなかにある”守りたい無駄”をちゃんと自分で守らないと侵食されてしまうと感じているそうです。
『無駄づくり』のルールはシンプルです。
それは、なんでも作っていい、というもの。
便利なものができたら、それはそれですごいし、無駄なものができても、それも正解。
なんでも正解。
無駄づくりは”失敗のないものづくり”という言葉が印象的でした。
今後の藤原さんは考えを形にすることがうまくできて、それが続けばいいとのこと。
でかい野望はなく、ひたすら無駄なものを作り続けたいのだとか。
藤原さんの『無駄づくり』動画で流れている音楽について
動画を見たことがある人のなかにはその音楽が気になっている人もいたかもしれません。
『空中カメラ』というアーティストの『ハッピークルーズ』という曲。
高校の先輩のバンドで、『無駄づくり』を始めた頃に提供してもらったそうです。
なんかかわいい曲ですよね。
著書『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』について
藤原麻里菜さんはどのようにアイデアを生み出しているのか、気になったので、出版されている本を読んでみました。
『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』です。
これまで200以上の無駄な作品を生み出してきた藤原麻里菜さんが発明する上でどのようにアイデアを生み出しているのかをまとめた1冊。
考えてもアイデアが出てこない人、斬新なアイデアが浮かばない人におすすめの本です。
ものを考えるきっかけにもなるかもしれません。
『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』では71ものワザが紹介されていますが、ここでアイデアの出し方を4つほど紹介してみます。
「小さな問題」を意識する
世の中の商品やサービスはいまある問題を解決しようという発想から生まれてきます。
そのような発想から生まれたのが『オンライン飲み会脱出ボタン』です。
オンライン飲み会に参加したとき、普通の飲み会とはちがい、抜け出すタイミングがわからなくなるときがありますよね。
画面越しに「抜けます」というのも気が引けるので、ボタンひとつで脱出できるマシーンがあれば・・・という思いから生まれたそうです。
このように自分の半径1メートル以内で起こっている小さな出来事を認識し、それを解決するためにはどうすればよいだろうかを考えることがアイデアが生まれるきっかけとなるのです。
「流行への感情」から考える
藤原さんはタピオカブームが起きたときに、タピオカの写真がインスタにアップされているのを見ることが嫌だったそう。
インスタ映えのためにタピオカを買ってるんじゃない!と。
純粋にタピオカが飲みたいのに、インスタ映えのためにタピオカを購入しようとしている人で行列ができている。
このことから生まれたのが『インスタ映え台無しマシーン』。
まったく実用性はない作品ですが、タピオカブームの際に、僕自身も同じような感情を抱いたことがあるので、かなり共感できます。
このように流行への感情を意識し、「こんなものがあったらいいのに」と考えることで新しいアイデアが生まれてきます。
「欲」を深掘りする
会社を休むとき。体調は悪くないのに行きたくないとき。
仮病を理由に会社を休んだことがある人もなかにはいるかもしれません。
藤原さんは「仕事をサボりたい」という欲を深く考えていたときに、「仮病の理由がいつか枯渇するかも……」ということに気づいたそう。
このことから生まれたのが『会社を休む理由を生成するマシーン』。
このマシーンのつくる理由は現実的に使えるものはあまりないかもしれませんが、奇抜で息抜きになる発明品です。
このように「欲」を深掘りすることで新しいアイデアが生まれてくることもあります。
「嫉妬」から考える
スターバックスでカップに手書きのメッセージを入れてもらったことがある人もなかにはいるかもしれません。
まわりの人がメッセージカップを受け取るなか、スタバに頻繁に行く藤原さんはメッセージをいれてもらったことがなかったそうです。
その”嫉妬”が芽生えたことがきっかけとなって生まれた発明品こそ『スタバのメッセージを入れられるマシーン』。
自分ひとりでスタバのメッセージを入れられるというユニークなマシーンです。
嫉妬した経験というのも、アイデアが生まれるきっかけとなるそうです。
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藤原麻里菜さんの『無駄づくり』はなぜこれほど共感されるのか
藤原麻里菜さんの『無駄づくり』がなぜ世界的に注目されて、共感されているのでしょう。
ちょっと考えてみました。
現在、効率化によって社会のあらゆる場所から”無駄”がなくなっています。
それにより多くの人たちの中からも、”余裕”がなくなっているように思えてなりません。
1時間で10個の仕事だけをすればよかったのに、効率的におこえる技術が誕生し、工程が見直され、1時間で15個も仕事がこなせてしまえる……そんな感じです。
人間の脳みそ自体は進化していないのに、人間をとりまく技術ばかりが進化して人間に負荷をかけていきます。
また、これまで移動時間は休憩も兼ねていたのに、ネット環境・スマートフォンなどのデバイスの普及によって移動時間さえも仕事場となってしまいました。
人は無駄があることで、無駄にふくまれる”余裕”によって、日々適度に息抜きをしながら生きていたはずです。
資本主義社会は無駄を排除することで利益をあげていこうとする仕組みです。
資本主義社会では”無駄”は排除されるべきものとしてみなされています。
そのような「無駄をなくしていこう」とする社会の逆に位置するのが”無駄づくり”です。
”無駄”はお金になりませんが、ゆとりがあります。余裕があります。
藤原さんの”無駄づくり”によって発明される作品は、役立つとは言えないものが多いです。
ただし、人々のこころに”ゆとりと余裕”を芽生えさせます。
ゆとりと余裕が枯渇した社会で身をすり減らしながら生きている人が多いからこそ、藤原さんの”無駄づくり”が共感されているような気がします。
まずひとりひとりの人間がこの社会のなかでいますぐにやるべきこと。
それは、あえて無駄なことをしてみること。
時間がなくて忙しい日々であっても無理やり時間を作り、やることリストのいちばん下にある、優先順位が低い行動をする。
そのような無駄な行動をすることが社会に求められている時期に差し掛かっているように思います。
2022年6月に西武渋谷で個展を開催
現在(2023年6月時点)、文學界にて、『余計なことで忙しい』というエッセイを連載中
現在の藤原さんは文學界にて、『余計なことで忙しい』というエッセイを連載しています。
いくつか読ませてもらったのですが、シンプルにかなりおもしろかったです!!
『子ども服を買う』の回なんて最高です。
独身で子供がいない藤原さんがアカチャンホンポに子供服を買いに行く話なんですが、笑えるくらいおもしろい。
この人のエッセイを読んでいると、積極的に無駄なことをしたくなってきます。
不思議なエッセイなので、興味があるのでぜひ毎月発売の文學界を手に取ってみてください。
近いうちに、この連載をまとめたエッセイ集も出るかもしれません。
まとめ
効率化によって社会のあらゆる場所から”無駄”がどんどん削ぎ落とされている社会でこそ必要なもの。
それが”無駄なこと”なのだと思います。
”無駄”がなくなっていくと、人はどんどん息苦しさを感じて生きづらくなってしまうのではないでしょうか。
藤原麻里菜さんの『無駄づくり』の精神がいまの社会に必要とされているので、共感する人が多いのでしょう。
まずは休みの日から、あえて無駄なことをしてみる。
そうしたら、こころに余裕が生まれてくるかもしれません。