小説家・村上春樹さんの短編小説『ドライブ・マイ・カー』が2021年夏に公開されます。
西島秀俊さん、岡田将生さんなど実力派の俳優が出演されるようですね。
気になって『ドライブ・マイ・カー』のHPのあらすじを読んでみて、まず感じたこと。
映画のあらすじ、原作と少し違う……?
気になったので、原作を読み直しました。
この記事では、映画と原作の違いなど気になった箇所をまとめてみました。
もくじ(各リンクから移動できます)
『ドライブ・マイ・カー』とは
『ドライブ・マイ・カー』は2014年に発売された『女のいない男たち』に収録されている短編小説です。
『ドライブ・マイ・カー』原作版のあらすじ
原作版のあらすじを簡潔にまとめますとこんな感じ。
『ドライブ・マイ・カー』映画版のあらすじ
映画版のあらすじは、公式HPから引用します。
舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…
原作と映画の違い
登場人物の名前
主人公の俳優の名前が原作と映画版で微妙に違うようです。
映画版では家福悠介となっていますが、原作では「家福」のみで下の名前はありません。
同様に、岡田将生さんが演じる俳優の高槻耕史も、原作では「高槻」のみで下の名前はありません。
下の名前は映画化にあたり、追加されたようです。
主人公・家福が演出家?
映画のあらすじを読んで気になった箇所のひとつが、主人公・家福の肩書きです。
『ドライブ・マイ・カー』の原作では、舞台俳優という設定で、演出家というニュアンスはふくまれていません。
広島へ向かう?
映画のあらすじを読んで気になったもうひとつの箇所。
『ドライブ・マイ・カー』の原作では”広島”という地名が出てくることはありません。
家福が出演する舞台は銀座の劇場でおこなわれており、原作ではみさきの運転で銀座に送迎されるシーンが描かれています。
原作では東京都内を中心に物語が進みますので、広島へ向かうという設定は映画版のオリジナル設定かと思われます。
原作の物語自体、都内のみの話でそれほど盛り上がる内容ではないですので、東京から広島へ向かう設定を追加したのかもしれません。
愛車の色
原作では家福の愛車の色について下記の描写があります。
二日後の午後二時には、黄色のサーブ 900コンバーティブルは修理を終えられていた。右前面のへこんだ部分は元通りに修復され、塗装も継ぎ目がほとんどわからないように丁寧に仕上がっていた。
その車を新車で購入したとき、妻はまだ存命だった。ボディーカラーの黄色は彼女が選んだものだ。
翌日からみさきは家福の専属運転手となった。午後の三時半に彼女は恵比寿にある家福のマンションにやってきて、地下の駐車場から黄色いサーブを出し、彼を銀座にある劇場まで送り届けた。
原作では愛車の色は黄色です。
ところが、映画版のイメージ写真では、西島秀俊さんが赤い車に寄りかかっています。
黄色よりは赤色のほうが映画の雰囲気にふさわしいということなのでしょうか。
車体のカラーの変更はどういう意図があるのかいまいちわかりません。
原作が映画化されるときの村上春樹さんのスタンス
村上春樹作品はこれまでいくつか映画化されています。
たとえば、『ノルウェイの森』『ハナレイ・ベイ』『納屋を焼く』あたりですね。
ちなみに村上春樹さんは原作が映画化されるとき、下記のようなスタンスでいるようです。
川上未映子さんとの対談本『みみずくは黄昏に飛びたつ』のなかにこのような発言があります。
彼の最初のシナリオを読んでみて、いくつか「ここはこうした方がいいんじゃないか」と思う箇所があって、僕なりにそこのシーン書き直してみたんだけど、トランはやはり気に入らなかったみたいですね。彼には彼の独特の美学があるし、ただでさえ頑固な男です(笑)。もちろん僕はすぐにひっこめました。小説は僕のものだけど、映画は彼のものだから。
こちらは『ノルウェイの森』が映画化されたときの脚本のエピソードです。
「小説は僕のものだけど、映画は彼のもの」と村上春樹さんは言っています。
というわけで、今回の映画『ドライブ・マイ・カー』も原作と設定がところどころ変わっていますが、村上春樹さん的には原作と映画は別というスタンスを継続しているのだと思われます。
なのでとりあえず、今回の『ドライブ・マイ・カー』の映画は、原作の雰囲気をベースにした別作品という感じで見るのがよさそうです。
映画『ドライブ・マイ・カー』予告編
予告編第1弾
予告編第2弾
まとめ
短編小説『ハナレイ・ベイ』の映画版を見たときは、だいたい原作どおりだったなと感じました。
しかし今回の『ドライブ・マイ・カー』は、ところどころ設定が変わっているみたいなので、『ドライブ・マイ・カー』の映画は原作とは別物として考えたほうがよさそうです。
短編小説をどのように長編映画として膨らませているのか気になりますが、現時点(2021年4月)ではまだ予告映像も公開されておらず、情報が少ないです。
2021年6月の情報では、カンヌ国際映画祭コンペ部門に選出され、上映尺は179分とのこと。ほぼ3時間ですね。ニュース記事はこちら。
映画版もなんだかんだいっても気になるので、公開されたら見に行きたいと思います。
『ドライブ・マイ・カー』の公式HPはこちら。
舞台俳優の家福(かふく)は妻を亡くしており、妻がかつて俳優の高槻という男と関係を持っていたと感じていました。時間が経っても妻がなぜそのようなことをしたのかわからず生きていたところ、事故により運転免許停止となります。専属の運転手を探していると、家福は自動車修理工場の経営者から渡利みさきという若い女性ドライバーを紹介されます。家福は愛車・黄色のサーブ900コンバーティブルで舞台がおこなわれる銀座まで毎日みさきに送迎してもらうことになります。