【村上春樹・ユニクロTシャツ】「SNSは見ない」インタビューについての考察

村上春樹
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いま、ユニクロが発行している雑誌『LifeWear magazine 』内の『村上春樹に26の質問』が話題になっていますよね(2021年3月現在)。

あらためて、その回答を引用してみます。

大体において文章があまり上等じゃないですよね。いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、人生にとってものすごく大事なことなんです。だから、逆の言い方をすれば、まずい音楽、まずい文章っていうのは聴かない、読まないに越したことはない。

ユニクロ『LifeWear magazine 』より

こちらの発言に対して、SNS上ではさまざまな感想があがっていますよね。

2015年に発売された、読者とのやりとりをまとめた『村上さんのところ』のなかに、SNSに関しての回答がありました。

『村上さんのところ』とは、読者からの質問メールに対して、村上春樹さん自身が回答した企画(3万7465通のメールが寄せられ、3716通を返信した)。

今回、村上春樹さんがなぜSNSを見ないのか、SNSと距離を置く理由を考察してみたいと思います。

村上春樹さんがSNSを見ない(距離を置く)理由

村上春樹さんは執筆と翻訳とランニングとラジオで忙しいから

村上春樹さんといえば、小説家であり、翻訳家としても活動しています。

昨年2020年の出版を見ると下記です。

1年で5冊も手掛けていますね。

2020年4月 『猫を棄てる 父親について語るとき』エッセイ

2020年6月 『村上T 僕の愛したTシャツたち』エッセイ

2020年7月 『一人称単数』短編集

2020年8月 『心は孤独な狩人』翻訳

2020年10月 『「グレート・ギャツビー」を追え』翻訳

2020年はかなりハイペースで出版をしていますね。

ここ最近の村上春樹さんは『村上RADIO』というラジオ番組までやっています。

村上JAM~いけないボサノヴァ~オンライン配信を視聴した感想

しかも、毎日10キロのランニングもかかさないというワーカホリックなお方。

日々、精力的に活動されています。

忙しすぎて、SNSのチェックにまで手がまわらないという印象です。

村上春樹さんは誰よりも『言葉の怖さ』について理解しているから

読者とのやりとりをまとめた『村上さんのところ』【コンプリート版】から、SNSに関しての文章を引用します。

僕はこうして文章を書いて 35年も生活していますが、身にしみて学んだのは「言葉って本当に怖い」ということです。ペンは剣よりも強いとよく言いますが、言葉は実際にナイフのように人を切り裂きます。だから僕は慎重に慎重をかさねて文章を書いています。こういうやりとりも、いい加減にほいほい書いているように見えるかもしれませんが、これでずいぶん神経をつかって書いているし、何日か寝かせて、用心に用心を重ねています。僕はなんといっても言葉のプロですから、失敗は許されません。

でも世間の多くの人は、言葉の怖さをよくわかっていないように見受けられます。そして SNSが発達したせいで、抜き身の刃物のような言葉が言説空間をひゅんひゅん飛び交っています。これは僕なんかから見ると(つまりプロの視点から見ると、ということですが)、ほんとうにとんでもないことです。あなたが傷ついたり、いやになったりする気持ちはよくわかります。そう感じるのがむしろ当然です。インターネットは便利なツールですが、僕らはなんだかとんでもないものを解き放ってしまったような気がすることもあります。

『村上さんのところ』より

この発言は『村上さんのところ』の「言葉の怖さ」という項目にある文章です。

村上春樹さんはご自身の言葉を世に出す前に、何度も推敲(書き直し)しているそうです。

読者にわかりやすい表現を選ぶために、です。

言葉のプロの村上春樹さんが言うと、言葉はただのコミュニケーションツールではなく、刃物のようにも思えてきます。

誰もが手軽に言葉を発信できる時代は便利ではありますが、『言葉の怖さ』について再認識する時期に時代が入ったように思います。

村上春樹さんの言葉に対する姿勢から学べること

SNSを利用するにあたり、何度も書き直しをする村上春樹さんから学べることは下記ではないでしょうか。

SNSに投稿する際は、とりあえず「言葉」を下書きで1日寝かせる

言葉を1日寝かせれば、言葉による不要な事故を防げる可能性が高まります。

村上春樹さんは読者への返信をする際も、書いてすぐに返信をせずにメールの返信文章ををわざわざ「下書き」に入れ、最低でも1日は寝かしていたそうです。

まとめ

SNSの登場により、誰もが何かを発信できて、誰とでもコミュニケーションが取れる便利な時代になりましたよね。

ただ、村上春樹さんが指摘されるように、言葉が刃物となって目先に突きつけられる場面も多くなっているようにも感じます。

言葉のプロである村上春樹さんからすると、SNSは刃物(チェックされずに発信された言葉)が飛び交っている状態に見えているのかもしれないですね。

そう考えると、ちょっと怖いですよね。

言葉は誰かを救いもしますが、誰を死に至らしめる凶器にもなりえます。

今回の村上春樹さんのSNSに関してのコメントは、言葉の怖さについて考えるきっかけとなりました。

現在、発売されている『村上さんのところ』は紙の本(厳選された回答を収録)と、kindle版(回答すべてを収録)があります。今回紹介した、『言葉の怖さ』については、紙の本に収録されているかわかりません。

購入するなら、全回答が見られるkindle版がおすすめです。